domingo, 18 de septiembre de 2011

ボリビアの政治の混迷について(TIPNIS問題)

現在ボリビアは、エボ・モラレス政権が東部低地のイシボロ・セクレ国立公園(TIPNIS)をもろに突っ切る道路の建設を許可したことで、東部先住民がこれに抗議運動を起こし、それに対して政府と政府を支持するコカ栽培農民がそれを強硬に抑え込もうとするという状況が起きている。(ちなみにこの政府の動きは地域住民との協議を義務付ける憲法に違反している。)

そもそもこれは呆れた状況だ。国際的な舞台では環境保護の旗手として振る舞おうとするエボ・モラレス大統領が、国内では開発を環境に優先させるというのは、以前から指摘されていた傾向ではあるとしても、ここまであからさまにやられてしまうと私は呆然としてしまう。そして同時に、ボリビア初の先住民出身大統領のはずのエボ・モラレスが先住民運動を強硬に抑え込もうとするとは、これまた私は呆然としてしまう。この唖然とする感じや怒りは、ボリビア社会に広がり始めている。
(これを含めて、2011年のボリビア政治をめぐる空気は、モラレス政権発足当初の高揚とはだいぶ状況が変わっていて、ちょっと注意が必要であろう。)

かつて私自身は、2000年代のボリビア政治は、国の理念とアジェンダをめぐるビジョン間のせめぎ合いとして展開されているという見解を提示したことがあった(藤田護「再び国家の時代へ―2000~05年のボリビア政治の動き」2006年日本ラテンアメリカ学会大会報告原稿)。これじたい重要な思想的問題へとつながるところなのだが、しかし憲法と選挙法の改正の頃から、そのような見方では現実のボリビア政治の動き自体はどうもうまく捉えられなくなっている気がする。

このTIPNIS問題に関して、Fernando Mayorgaは、エボ・モラレス政権が発足当初からもっているナショナリスト・開発主義的傾向(道路建設によるボリビア国土の統合)と先住民主義的傾向の間でのジレンマが現れ続けているのだととする見解を示している(La Razón紙9月12日オピニオン欄)。
http://www.la-razon.com/version.php?ArticleId=137293&EditionId=2649
Carlos Mesa元大統領は、エボ・モラレスの最大の支持基盤であり、この国立公園の土地に向かって植民を進めていくコチャバンバ県亜熱帯地域のコカ栽培農民の利害が絡んでいることを指摘している(スペインEl país紙9月18日オピニオン欄)。
http://www.elpais.com/articulo/opinion/Bolivia/indigenas/indigenas/elpepiopi/20110917elpepiopi_12/Tes
それぞれ一理のある論評なのだが、それ以上の何かがあるのではないだろうか。

低地に移住していく高地先住民(colonizadores)と低地先住民の利害が土地などを巡って衝突していることは、以前から指摘されていたことではあったが、国政を左右する形でこの利害対立と低地先住民の抗議運動が浮上したのは、これが初めてではないだろうか。(1990年の有名な低地先住民のデモ行進は高地先住民との対立に基づくものではない。)そして、高地先住民が低地への植民勢力であり、ボリビア社会の少数派である低地先住民を蔑視・差別して軽んじるという厄介な(そしてもちろん以前から存在していた)論点も表面化してきた。

これは、支配階層と排除された社会勢力間の対立ではなく、多様な社会勢力同士の利害対立自体が国政の争点になるようになったのが、2011年のボリビア政治の特徴だといえるのではないだろうか。

2000年代中盤に新規な理念の提示が左派(estado plurinacional)と先住民主義(suma qamaña, vivir bien)から提示されたが、その提示とそれを実現させようとする努力という意味では、ボリビアは国際動向の最前線からはおそらく既に落っこちてしまっている(問題としての重要度がなくなったと言っているのではない)。しかし、ボリビア国家とその政治は、おそらく確実に社会に近くなり、様々な社会勢力の動向を反映するようになっているのだ。混迷を深める、ごちゃごちゃした(messy)ボリビアの政治過程は、我々にとっての理解のハードルを更に上げつつあるのではないだろうか。

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