アメリカ大陸におけるスペイン語は、先住民言語の接触などにより、地域ごとに独自の様相を示す。アンデス地域で先住民言語との二言語話者を中心として話されるスペイン語を――もちろんその中にも多様性が存在する筈だと思うのだが――まずは一括りにアンデス・スペイン語(castellano andino)と呼ぶことになっている。
私がいつも時間を一緒に過ごしている家族のおばあちゃんは、アイマラ語の方がスペイン語よりも若干得意な二言語話者なのだが、スペイン語を話すといくつかの単語で接頭辞が落ちる。前から二つは把握していたのだが、今日話している間に思いがけずもう一つあることに気づいたので、ちょっとここに書き留めておこう。
(1)aparecer「現れる」がparecerになる。だから、No parece.と言うと「(話題になっているその誰かが)来ないねえ」という意味になる。動詞parecer自体の意味からすると「そうではないようだ」を頭に浮かべがちだが、そういうことではない。
(2)refrescoは、コカコーラやスプライトなどの炭酸飲料を指すとともに、果物の切れ端を水に入れて煮出し、砂糖で味付けをした飲み物を指すのだが、うちのおばあちゃんはこれをfrescoと言う。
(3)今日話を聞きながら気づいたところでは、preocupado「心配している」をocupadoと言う。ocupado自体は「忙しい」という意味で使われるので、Ocupado estoy.と今日言われたときに、忙しいのかと最初思って聞いていたら、どうも文脈に合わず、心配していると言っていたのだった。
(注:アンデスのアイマラ語やケチュア語には文法的な性の区別がないので、女性が主語の場合でも形容詞などを男性形で用いることが多くあり、ここもそうなっています。この記事を読んだ方からのご質問があり、補足しておきます。ありがとうございます。)
あまりこういう話は、アンデス・スペイン語の特徴として確認されていないような気がするが、そもそもうちのおばあちゃんの特徴なのか、それとももう少し広く見られる特徴なのかすら分からない。
もう一つは、それぞれの地域のスペイン語で、点過去と現在完了をどのように使い分けているかは大問題なのだが、そもそもうちの家族は点過去を使っていないのではないだろうか。線過去と過去完了にはアイマラ語の動詞の過去の形に対応した用法があるのだが(線過去はremoto cercano、過去完了はremoto lejanoに対応する)、それ以外は全部現在完了で話しているんじゃないだろうか。
前からボリビアのスペイン語は現在完了を多用するという印象があり、ただ点過去も使わないわけじゃないしと漠然と思っていたのだが、私自身が幾つかの社会集団をまたいで接しているから、いろいろとごっちゃになっているのかもしれない。この家族の使うスペイン語を、言葉を、もうちょっとちゃんと見つめてみよう。
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