アンデスにはススト(susto、怖れ)という病理診断がある。子どもが夜寝ていて布団をはいでしまう、あるいは、何かにつけてビクビクしているようでセンシティブになるなど、こういうことがあるとスストではないかと疑われる。魂が本人の身体から抜け出してしまっているのだ。この症状が進むと、子どもが土を食べだすらしい。
ボリビアのラパス市の近郊では魂呼びのようなことをするのだが、ペルーのクスコ市ではそれをやらず、むしろ卵を使って身体の各部位を撫でていく(スペイン語では、身体に卵を通す(pasar el huevo)という言い方をする)。スストがあると、その悪い部分が吸収されるのだそうで、卵を割ってみて、白い部分がたくさん出てくると、やはりスストだったのだと判断できるのだそうだ。(下の写真を参照)
これは本来は呪術師の仕事なのだが、大体のやり方を覚えておいて自分でやってしまうということもある。そして面白いことに、卵で身体を撫でている間には(キリスト教の)主への祈りを唱えるのだという。
私は常々、アンデスにおいて人々は常にキリスト教とアンデス宗教の間で揺れ動いていると思っている。しかし、このスストのような場合は、あまりにも日常に根付いてしまっていて、キリスト教を信仰していても、ほとんど当たり前のように考え方を受け入れて対処していることが多く、祈りの言葉から見てもここでは両者は混淆している。
この具体的な場合は、心理学的には(?)、子どもが一時的に親から離れてしまったことで不安になって調子を崩しているとも言えてしまうが(家族の中にそういう考え方をする者もいる)、それはそれとして、やっぱり枠組みは複数あった方が良いのではないかな、と私は思っている。事実、次の日からその子は、少しすっきりしたような顔をしている。大家族で子育てを共同でするのだって、いいじゃんね。
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