ペルー南部からボリビア西部にかけて形成されているアルティプラノは、文字通り(alto y plano)には「高原」なのだけれど、実はそれほど平らなわけではない。エルアルト(El Alto)市(高度4,100m)からビアチャ(Viacha)市を通り抜けて、SOBOCEのセメント工場を右側から回り込むように入っていく街道に入ると、しばらくしたところからぐんぐん高度を上げていく。ティワナクの遺跡からペルー国境のデスアグアデロ(Desaguadero)市に向かう街道も、エルアルトを出た所で切り通しのような場所を通るので、そういうことかと思ったら、さらにぐんぐんと上っていく。
天井に荷物満載かつ人も満員の何十年前に造られたかというようなメルセデス・ベンツのバスは、喘いで喘いで走る。同行している友人は道端の湧水の場所を正確に知っていて、そこでとまってボンネットを開けてモーターを冷やす。
そのうち、"Apachitankasktanwa"(我々はアパチェタを通っているよ)と友人が回って来て耳打ちをしてくれる。小高い所が聖なる場所(アパチェタ)になっていて、これ自体ぼくはそれほどよく分からないのだが、十字架が立っていて小さな祠のような場所が作られている。前後を見渡してみてハッとする。後ろにはイリマニ(Illimani)とムルラタ(Mururata)の山々が遥かにエルアルトの向こう側にあり、前方にはサハマ(Sajama)の山がその特徴的な形で遠くに雪を頂いて見えている。ここからパカヘス(Pacajes)郡に入っていくのだけれど、そうか、ここは別々の山が司る領域の境い目なのかと気付いて、しかもその峠だけは両方が見える特権的な場所だけに、その重要さは身に染みて感じられる。
(後ろ側にはワイナ・ポトシ(Huayna Potosí)の山もあるのだが、たまたまそれは見えなかった。)
地形が複雑なアンデス地域では、新しい場所を知ると、そしてそれをそこに住み続けている人とともに知ると、ハッとするような地形の感覚が身体で獲得されることがあって、これはまたその一つであった。
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